税金の仕組みを理解することは、賢い資産形成のために必要な第一歩です。税金は仕組みが国によって異なり、複雑になっていますが、国が用意している税制優遇施策を理解し活用することは非常に重要です。
ここでは、イギリスのISA制度について説明します。投資を始めるに当たって必ず出てくるワードです。この記事を読めば、ISAとは何で。活用することで何がどうメリットがあるのかを理解することができます。
ISA(Individual Savings Account)とは?
ISAとは、Individual Savings Accountの略称で、イギリスで1999年から導入された、非課税で利息や配当、利益等を受け取れる制度です。日本ではNISAと呼ばれていると言えば分かる人もいるかも知れませんが、はNISAはイギリスISAを参考に作られた制度です。
この制度の最大の特長は、預金や投資から得られる利益に対して税がかからない点です。具体的には、普通の貯蓄口座や投資口座では利息や配当、資本利益に税金がかかる場合がありますが、ISAではこれらが非課税となります。
ISAは、イギリスの税制内で合法的に税金を節約する方法として、多くの人々に利用されています。ただし、年間で預け入れられる金額には上限があり、その限度額を超えた場合には特典が受けられません。
ISAには複数種類がありますが、全て覚えても意味がないので重要なものだけを上げておきます。
Cash ISA | これは最も基本的なISAで、銀行やビルディング・ソサエティに預ける通常の貯蓄口座と同じですが、得られる利息が非課税です。 |
Stocks and Shares ISA | 株式や債券、投資信託などに投資することができます。こちらも得られる配当や資本利益が非課税です |
Lifetime ISA | 18歳から40歳までの人が開設できるこのISAは、家を買うためや年金として使うことができます。政府からのボーナスもあります。 |
Innovative Finance ISA | P2Pレンディング(個人間融資)など、従来の貯蓄や投資とは異なる方法でお金を増やすことができます。 |
Junior ISA | 18歳未満の子供用のISAです。親や保護者が管理し、子供が18歳になったら自分名義のISAに変わります。 |
ここでは、投資目的で使うStocks and Shares ISAとJunior ISAに焦点を当てて説明します。
Stocks and Shares ISA(株式型ISA)とは?
年間上限額と期間
Stocks and Shares ISAの年間投資上限額は2万ポンドです。非課税の期間は無制限です。投資期間が恒久的な制度なので、永久に2万ポンドを積み上げて行くことができます。
年間投資枠は、イギリスのTax year毎にリセットされます。Tax yearは4月6日から翌年4月5日までとなっています。その為4月は駆け込み投資と、利用枠リセット後の投資により、ISAへの資金流入が年間を通して一番多い月となっているようです。
帰国時の扱い
イギリスISAの場合、証券会社に連絡をすれば、海外移住時もISA口座を維持可能な上に、非課税の恩恵も継続して受けられます。但し日本に帰国して日本の居住者に戻った場合は、海外の資産に対しても日本で税金を支払う必要があり、確定申告が必要という認識です。その点は手間ですし資産形成のスピードも減速しますので、帰国時に売却するか、継続して運用するかは是非検討して下さい。
Junior ISAとは
年間上限額と期間
年間投資上限額は9000ポンドです。非課税の期間は、Stocks and Shares ISAと同じく無制限です。
ただし、18歳までは引き出すことができないという制限があります。18歳になったら自動的にStock&Shares ISAに移行されるので、非課税期間は無制限となります。
制限があるのは日本と同じですが、お子様の年齢によってはあまり活用に積極的にならなくても良いかと思います。子供が幼く、数年で帰国してしまう場合は、18歳まで眠った口座になる可能性が高く意味や旨味が薄れてしまうと思います。
ISAを活用して税制優遇を受けよう!
海外居住者は日本の証券会社を通じた取引ができないので、イギリス在住で投資を行うにはイギリスの証券会社で口座を開設して取引する必要があります。
イギリスの証券会社で口座を開くときに、ほとんどの方がオンラインで実施すると思いますが申込時にISAに関する質問がされます。要は、Stocks and Shares ISAを選択して於けば問題なく、また非課税の恩恵を受ける事ができます。
ISAを使う上での注意点
ISAを開設する際にはいくつかの注意点とコツがあります。これらを理解しておくことで、より効果的にISAを活用することができます。
- 年間預け入れ上限: ISAには年間で預け入れられる金額に上限があります。この上限を超えた場合、税制上の優遇は受けられませんので注意が必要です。
- 複数のISA: 一人が同じ年度内に複数の同種類のISAを開設することはできません。しかし、異なる種類のISA(例:Cash ISAとStocks and Shares ISA)は同時に持つことができます。
- リスト
- 引き出し制限: 特にLifetime ISAのような特定の目的に特化したISAでは、条件を満たさない限り早期に資金を引き出すとペナルティが発生する可能性があります。
- 締め切り: 通常、ISAの年度は4月6日から翌年の4月5日までです。この期間内に預け入れなければ、その年度の預け入れ枠は失われます。
特に、2点目は注意が必要です。ある年にISAを活用する場合、基本ISAは同じ証券会社でしか使えません。私の場合、VanguardでStocks and Shares ISAを活用していますが、個別株もやってみようと、他の証券会社の口座を作成してISAを活用しようとしてもできません。これはイギリスの税法に基づいています。
ただし、新しい税年度が始まると、新たに別の証券会社でStocks and Shares ISAを開設することは可能です。また、過去の税年度に開設したStocks and Shares ISAとは別に、新しい税年度で新たな証券口座を開設することもできます。
さらに、既存のStocks and Shares ISAを別のプロバイダーに「転送」することも一般的には可能です。この場合、転送によって新しい証券口座が開設されるわけではないので、同一税年度内で複数のStocks and Shares ISAを持つという制限には抵触しません。
注意点としては、転送手続きを行う際には手数料がかかる場合があり、またすべてのプロバイダーが転送を受け付けるわけではないので、事前に確認が必要です。
以上のように、基本的には1つの税年度内で1つのStocks and Shares ISAしか開設できないという制限がありますが、転送や新しい税年度での開設によって柔軟に運用することは可能です。
参考
最新の情報は常にイギリス政府や証券会社のホームページをご確認ください。
イギリス政府のISA紹介ページ